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​靴下

ヨーロッパの王侯貴族が履いていたのがショース、またはホーズである。

 とどのつまり美しいスーツスタイルとは細かいパーツの積み重ねであり、その積み重ねの調和が全体を作る。調和は細かいパーツだけを吟味していては駄目で、全体のイメージが求められる。画家が少しずつ色を足したり引いたりしてイメージと実物を近づけるように、細かいパーツをあれこれ試し、全体の調和を実現する必要がある。


 そこで、まずは一番簡単なところから筆を起こしたいと思う。


 靴下はホーズ一択である。ホーズとはハイソックスのことである。ロングホーズとも言う。薄手のコットン、色は黒、もしくは黒に近いものを選ぶ。畝(うね)はあまり目立たないものがいい。

​​ 添付した写真は私物である。ハリソンのコットン&ナイロンで600円だ。アウトレットで買った。


 世間では脛まで(くるぶしまでのは論外)しかない短いソックスが主流である。立っているだけなら脛までの靴下でも問題はないのであるが、人間、いつ座って足を組むかわからない。その時、脛の肌が覗いてしまうのは失態である。そんな下らない失態を避けるためにもロングホーズを履いておくに越したことはない。ハイソックスは暑いのでは、と思われるかも知れないが、暑いのは厚いのを履くからで、薄手のものならば脛までのソックスと変わらない。


 ルイ十四世の絵画などを見るとわかるが、昔の貴族や王はショースという足の形がわかる脚衣を着用していた。また、ショースの中に詰め物などをして、足の形を美しく見せていたという。


 わたしはズボンから覗くホーズは美しいと思っている。佐藤栄作と会談するニクソンが足を組んでいる写真がある。大きくホーズが覗いている。これがソックスで脛が見えていたら目も当てられない。ホーズだからこそ紳士でいられるのである。


 一足千円も出せば買うことが出来る。薄手の黒のホーズ。まず、これを着用することにより、次の靴選びに移れるというものだ。ちゃんとした靴下がなければ、ちゃんとした靴は選べない。間違えても厚手のスクールソックスなどを履いて靴を買いにいってはいけない。

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