top of page

ドレスシャツ

 ワイシャツはホワイトシャツに略称。厳密に言えば青いワイシャツは存在しない。紛らわしいのでここでは正しいスーツスタイルに必要なシャツをドレスシャツと呼ぶことにする。

 スーツを着る前に必ず着なければならないもの、それがドレスシャツである。だから、正しくスーツを購おうとするときには、まず、正しいドレスシャツを着ている必要がある。近年はクールビズの弊害で無駄な装飾の施されているものも多く出回っている。それらは避けねばならない。
 では、正しいドレスシャツとはなにか。正しいドレスシャツを説明するためには、誤ったドレスシャツを説明した方が早い。
 

装飾について

 江戸っ子は裏地に凝るらしいが、それは着物スタイルの話でありスーツスタイルでないことは少し考えれば小学生でも分かることである。ドレスシャツの裏地を凝ってはいけない。


 無駄な装飾とは以下のようなものだ。


①裏地が表地と違う。
②ボタン及びボタンホールが著しく生地の色と異なる。(サックスブルーに白のボタン及びボタンホールは粋である)
③首元に複数ボタンが付いている。
④襟が二重になっていたり無駄な装飾がある。

 

 

サイズ

 正しいドレスシャツの条件は、サイズが適正であること。
 どれだけジャストサイズのスーツをあつらえても、ドレスシャツがオーバーサイズだったり寸詰まりだったりすれば、スーツ姿は無様になる。
 ドレスシャツの主な採寸箇所は、以下の二箇所だ。

①首回り
②袖丈

 標準体型のひとはこの二箇所が適正サイズであれば問題ない。このほかの採寸箇所は、着丈、腕周り、チェスト、ウエスト、肩幅、などがある。これらをギリギリにつくると、スリムフィットのものが出来る。


 普通のドレスシャツ売場では、40-82などの表記で売られている。この場合40は首回りが40cmで、袖丈が82cmという意味だ。売場でうろうろしていれば店員が寄ってきて首回りと袖丈を計ってくれる。


 なぜか袖丈は短目に計られることが多い。袖丈は袖口をボタンで留めるので長目でも構わない。店員の計った数値が短いと思ったら迷わず長目を買う。ボタンを留めないで着たときに、袖が手の甲を覆うくらいがよい。


 ドレスシャツも試着して買うのがいい。大きな、もしくは専門的な店では、サイズ確認用のゲージシャツが置かれていて、首回りと袖丈、フィット感などを確認できるようになっている。利用するのも手である。ズボンは1980円でも試着するのに、数万円のドレスシャツを試着しないというのは、考えてみればおかしな話である。

 

 

カラー(襟)

 余分な装飾がない、正しいサイズの次はカラー(襟)である。collarの語源は古代ラテン語で首輪の意味らしい。日本語の「えり」は「へり(縁=周辺)」であるという説が有力だ。中国語では襟である。衣偏に禁である。禁はタブーの意味である。してはいけないこと、閉じ込める、の意味もある。つまり、襟は体を閉じ込める、戒めるものである。ゆえに、スタンドカラーでは襟を正すことが出来ない、淡紺青の襟も目指せない。オープンカラーは胸襟が開きっぱなしである。


 襟の種類はあまりに多い。レギュラーカラーとセミワイドが最も無難であり、且つ簡単である。ラウンドカラーやカッタウェイなどは着こなすのが難しい。特に年配者が多い職場などではレギュラーカラーがいい。レギュラーカラーこそがフォーマルだと思われているからだ。

カフス(袖口)


 カフスはラウンドが無難である。角落ちも悪くない。マイケル・ダグラスは映画ウォール・ストリートで角落ちのドレスシャツを着ている。


 基本的に袖口のボタンは一つ。既製品では二つ付いているものが多く、腕の太さによって調整出来るようになっている。これだと、右手はきつめ、左手は時計をしてゆるめ、など使い分けることができる。腕回りを両腕ともジャストサイズであつらえた場合、薄型時計しか嵌められずコーディネートの幅が狭まる。オーダーではは左右で腕回りを変えることが出来る。おすすめである。カフスリングを使用する予定がないのならば、コンバーチブルにする必要はない。

前立て及びポケット


 前立ては、表前立てにするべきか、裏前立てにするべきか。ドレッシーな仕上がりにしたいなら裏前立てがいい。もっとも、ジャケットを着てネクタイを締めていれば、表前立てか裏前立てか見分けるのは至難である。わたしは裏前立てが好きだ。家でタイを外して書き物をしているときなど、表前立ては少しうるさい感じだから。

 同様の理由で、ポケットも付けない方が静かだ。グンゼのシャツにポケットがないように、もともと下着であったドレスシャツにポケットは付いていなかった。しかし、ジャケットもベストも着ないとなると、小物を入れるポケットがないわけで、あれば便利という理由で付けられた。便利さをとるか、エレガントであることをとるか、悩ましい。わたしは気分で付けたり付けなかったりしている。


 何度も洗濯をしたり、ペンなどを無頓着に挿してたりすると、ポケットの中にゴミが溜まったり汚れることがある。ポケットの形に添って、黒いゴミが溜まっているのは見ていてあまり気持ちのいいものではない。ポケットなしならばこの心配がないのも利点の一つだろう。

 

 

色及び柄

 色は何色がいいか。基本は白である。白は素晴らしい色で、白が合わないという人はまずいない。ブルーやピンクやイエローも薄い色ならいいが、これらは色質があって、ピンクと一言で言っても、合うピンクと合わないピンク、これは十人十色である。


 白とサックスブルー、この二つはとりあえず欲しい。ピンクは女性受けがいいので、その必要がある人はピンクもいいかもしれない。ただし、自分に合うピンクにしないと逆効果だ。カラー診断など一度受けると自分に合うピンクが見つかるだろう。


 柄はどんな柄がいいか。これも無地は誰にでも合って無難である。ストライプも嫌らしいものでなければいい。ドットのタイはエレガントだが、ドレスシャツのドットは少しもエレガントでないので間違えないように。


 Vゾーンはスーツ、ドレスシャツ、タイの三つで構成する。この中でもともと下着であったのはドレスシャツだ。その昔はカラーも取り外せたので、本格的に下着である。つまり、三者の中で、ドレスシャツは引き立て役にこそなれ、下着の分際で主役の座を奪うのはいささか立場をわきまえていないような気がするのだ。グレーのスーツに紺のネクタイ、白のドレスシャツは美しいと思う。このコーディネートに、白ではなく真っ黄っ黄のシャツを着ていたら、アーティストか芸人である。シャツは主張してはいけない。

bottom of page